高級食材として有名なものは世の中にたくさんありますが、その中にきのこの一種「シロアリタケ」というきのこが存在する事はご存じでしょうか?
残念ながら、日本では巷(ちまた)には出回っておらず、ある一部の地域でしか、発見されておりません。
食べた人達の感想としては、「大変美味」らしく、松茸よりも好きだという人も少なくないそうです。
そう聞くと一度は食べてみたいきのこです。
きのこ自体、元々栄養価も高く、好き嫌いを除けば、食卓には絶対欠かせない食材です。
そして名前に「シロアリ」と付く以上、シロアリとの関係も否定できません。
今回は「シロアリタケ」の実態とともに、シロアリの自然界での変わった役割の一つ
「きのこの栽培」についてまとめていきたいと思います。
1,幻のきのこ「シロアリタケ」
きのこにはたくさんの種類があります。
その数はおよそ4~5000種類ほどで、中には毒性があり食べられないきのこや、名前さえ付いていないものも含まれます。
そのたくさんあるきのこの中に「シロアリタケ」という貴重なきのこが存在します。
「シロアリタケ」とはあまり聞きなれませんが、実態が分からないきのこも多い中、この「シロアリタケ」はちゃんと研究がされているきのこです。
まずはこの「シロアリタケ」が幻だと言われる理由を挙げていきたいと思います。
「シロアリタケ」が貴重なワケ
「1日で枯れてしまう」
シロアリタケの寿命は1日。長くて3日だと言われています。
「シロアリタケ狩り」に行ったとしても、なかなか出会えそうにありません。
「一部の地域でしか採れない」
「シロアリタケ」はどこでも採れるという訳ではなく、採れる地域が限定されています。
本来はきのこが豊富で種類も多い、中国やタイの方で採れるそうで、一部では松茸よりも高く売っているそうです。
日本では、沖縄で確認されています。
「最高の旨味」
どれだけ希少なきのこでも、美味しくなければ幻とは言えません。
- 食感がいい
- 癖がない
- 風味がいい
- 味付けの要らない旨味
など、食べた事のある現地の人たちの感想としては、なんでもすぐに魅了されてしまうという事です。
「シロアリタケ」の季節が来ると、遠方から車を走らせ、わざわざ買いに来る人もいる程です。
「人工栽培が難しい」
しいたけやシメジの様に一般で広く売られているきのこは、人口栽培でたくさん作られていますが「シロアリタケ」は人工栽培の研究が進んでいるものの、それが難しく、なかなか手に入りません。
という風に、「シロアリタケ」が幻と言われるのには、これらの理由が揃っています。
シロアリタケが採れる地域や時期
「シロアリタケ」は採れる地域も限られていますし、時期も年中採れるわけではなく、限定されています。
―「シロアリタケ」が採れる地域―
【海外】
雲南省などが位置する中国南部
東南アジア
アフリカ
【日本】
八重山諸島・沖縄県石垣島・西表島・本島首里周辺
どちらかというと、日本で出会う事は難しそうですが、中国や東南アジアなどは、分布している数が日本よりは多いので、時季が来て、運よく収穫があった時には、市場などに置かれる事もある様です。
特に中国南部では、松茸も良く収穫されるので、一緒に並ぶ事もあるかもしれません。
【補足】
沖縄本島の首里付近で確認されたのには、中国や東南アジアなどと交流が始まった琉球王朝時代に当時の王族達の為、シロアリタケを栽培できる「キノコシロアリ」が持ち込まれた歴史もある様です。
そこまでした歴史が本当だとすれば、「シロアリタケ」がいかに高級食材かという事が分かります。
―「シロアリタケ」が採れる時期―
「シロアリタケ」が採れる時季としては、基本的には日本の「梅雨」の時季となります。
沖縄本島・首里周辺に関しては少し遅めの6月~7月あたりに採れる事が多いそうです。
そして「雨が降ったあと」
その日を狙って「シロアリタケ狩り」に行くと、もしかしたら出会えるかもしれません。
2,「シロアリタケ」の栄養素
同じキノコの仲間なので、栄養もたくさん詰まっているのでは・・と考えますが、実際「シロアリタケ」に含まれる栄養は何でしょうか。
まずはきのこ類に多く含まれる栄養素の種類も一緒に挙げていきたいと思います。
改めて知りたい!普段食べているきのこの栄養
普段、簡単にしかも安く買えて、店頭の売り言葉では
「げんきのこ」
「たくさん食べよう」
などきのこの栄養に注目している様に書かれているのを良く見ますが、実際にはどんな栄養があるのでしょうか。
食物繊維
腸内環境が整う事で、免疫力が上がり、アレルギー予防にもなります。
血中コレステロールが下がるのを助けてくれて、生活習慣病予防にも繋がります。
きのこの食物繊維はキャベツ以上です。
カリウム(ミネラル)
余分な塩分を体外に出してくれる大事な栄養素です。
このおかげで、高血圧予防に繋がります。
きのこの主な栄養はどちらかというと、「排出」する役割が多い様です。
その他(ダイエットに最適な栄養がたくさん)
「ビタミン」
糖分や脂質を体の中で燃やす役割はビタミン類がやってくれますが、きのこにはそのビタミン類もとても多いです。
カロリーもかなり低いのでダイエットには欠かせません。
「オルニチン」
肝臓機能が低いと太りやすくなります。
きのこには肝臓を健康にしてくれるオルニチンがとても豊富で、その量はしじみ以上です。
女性に嬉しい「シロアリタケ」の栄養
では「シロアリタケ」の栄養はどうでしょうか。
普段食べているきのこ類には、糖質などを燃やしてくれるビタミンは多いのですが、同じビタミンでもビタミンA・Cなどの栄養素が残念ながら少ないです。
ビタミンCなどは肌にもいい効果を与えてくれるので、無ければ他で補わないといけません。
まず、「シロアリタケ」にはアミノ酸類が多く入っている事が分かっています。
しみやそばかすなどに有効な抗酸化作用や、皮膚の老化防止などにも役立ってくれて、まさにビタミンA・Cに良く似た働きをしてくれます。
他には、アルコールの代謝も助けてくれるので、二日酔いに効果を発揮しやすいと言われています。
「シロアリタケ」には女性はもちろん、男女ともに嬉しい栄養素がたくさんです。
3,シロアリと「シロアリタケ」の関係
「シロアリタケ」の実態は少しずつですが分かってきました。
では、シロアリとの関係は何でしょうか?
「シロアリタケ」とはシロアリが栽培するきのこの事で、ある特定のシロアリが栽培しています。
一般的にシロアリとは、住宅被害を起こし、古い木材を侵食する事でしか知られていないのに、きのこを栽培するというのは一体どういう事でしょうか?
それにはシロアリの生態が関わってきます。
シロアリが「シロアリタケ」を栽培する理由
ー食べたものを消化できないシロアリがいるー
シロアリの餌、主な栄養源は樹木などに含まれる「セルロース」です。
前回記事「シロアリの餌となるもの」
https://luft-tco.com/cms/wp-admin/post.php?post=236&action=edit
住宅で見かけるシロアリにはあまりいませんが、山林に住むシロアリ達の中には、食べた枯れ木などを消化できないシロアリが多く存在します。
食べたものが消化できないのでは、栄養にもならないので、そういうシロアリ達は、自然界に存在する菌や微生物といったものの力を借りて、自分の栄養にしていく力を身に付けました。
そのシロアリが「キノコシロアリ」というシロアリ達です。
日本やその周辺では「タイワンシロアリ」という種類のシロアリ達がそれにあたり、「シロアリタケ」を栽培しています。
シロアリの未消化物がきのこの栄養⇔きのこ菌がシロアリ達の新たな栄養
という感じでお互いがお互いを栄養源にし、成り立っている関係です。
「シロアリタケ」が生えている一帯の地中には、必ずタイワンシロアリの巣が存在します。
もしも「シロアリタケ」を見つけたら、地中深く掘ってみると、大きな巣が現れるはずです。
栄養もあり人々を魅了する味覚のきのこを作っているのがシロアリだとは、とても興味深い事です。
貴重なきのこだけになかなか手に入らないのが残念です。
きのこの人口栽培には数種類あって、今のところ、どの方法でもシロアリタケの栽培には至らず、できたとしても僅かな量だそうです。
どれだけ研究を重ねてもまだまだ人間には栽培が難しい事を考えると、シロアリには嫌われる以外の役割があるのだと覚えておかないといけません。
このご時世なのですぐには無理ですが、沖縄や中国、東南アジアに旅行に行ける日が戻ってきたら、一度はこの目で「シロアリタケ」を見てみたいし、食べてみたいものです。
【和名】
「(オオ)シロアリタケ」
【沖縄名】
「ジーナバ」
【雲南省名】
「鸡枞菌」